「市橋達也 ・ 逮捕されるまで 空白の2年7カ月の記録」 考察

市橋達也被告

市橋達也被告の
指名手配から逮捕までの約2年7カ月の逃亡生活についてつづった手記を出版
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彼の罪は許されるものではない。
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しかし、実践した「Into the Wild」な逃亡人生
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今後の世界に参考になる部分がある。
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リンゼイ・アン・ホーカーさんのご冥福をお祈りします。
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逃亡者から見る青森の景気

p62
青森駅に着いたのは夜だった。
駅の周りを歩いた。図書館が入ってるビルがあった。
そこを通り過ぎた時に、おばさんが、女の子を買わないかと話かけてきた。一晩、
いくらだよ、優しい子だよ、と言った。
p65
青森でこんな生活はいつまでも続かない。絶対どこかでバレる。お金はすぐなくなるだろう。
お金がいる。
だったら仕事をしてお金を稼ぐしかない。
中略
町を歩いてる時、選挙期間だったのか、誰かの演説が聞こえた。
青森の求人率は全国でワースト二位だ、と言っていた。
それを聞いた時、青森で仕事をえるのは無理かもしれないと思った。
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(考察)
・逃亡者・市橋達也にもダメ押しされた青森の景気は
p65の文章でも分かるように相当の破綻状態に感じられる。
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道は同じく、臭いで集まる。

p93
誰もいないコンクリート護岸で休んで食べ物をたべていると、全身ダイバースーツを着た
大人が何人も護岸に上がってきた。彼らは無言のまま、走って来た黒のバンに乗り込み
車は走り去った。その不思議な光景を見ても何もおもわなかった。密漁か、もしかしたら密航だろうか。
でも僕には関係ない。食べながらそう思った。
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(考察)
・「蛇の道はヘビ」
身を隠す場所は同じであると感じる。
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・逃亡者である事から来る自身が感じられる。
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p176
三十代の親切な男性もまだいた。一緒に漫湖公園のそばにある体育館のジムにモノレールで行った。
彼はモノレールの中で携帯電話と偽造したパスポートを見せてきた。
「おれの携帯は偽造パスポートで契約できた。Kのも作ってやるよ」と言われた。
写真を撮りに行こうと言われた。
迷ったが、自分の顔写真が彼のパソコンの中に入るのはまずいと思って断った。
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(考察)
・沖縄の地には脛に傷を持つ者も多く見られ「蛇の道はヘビ」
「三十代の親切な男性」はそれらと同じ臭いを感じたのか
懸賞金目当か、後に脅かすつもりだったかは分からないが
この後「三十代の親切な男性」に触れて無い。
この男にも興味があるが、触れなかったことがこの後の逃亡生活につながったと思う。
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マスゴミとお笑い予言者

p157-158
部屋でテレビを見た。偶然、逃亡容疑者に関する番組が放送されていて、
僕のことも取り上げられていた。外国人の超能力者が容疑者の逃亡先を予言するという内容だった。
怖くて震えながら見た。
中略
番組が終わり、テレビは事実だけを放送するんじゃないということを初めて実感した。
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p160-161
本屋に入ると、番組に出ていた超能力者の”予言書”があった。
この人のうそを、本人と僕以外に誰が知っているのかなと思った。
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(考察)
・マスゴミのいい加減さも感じるが
この超能力者も大した玉である。適当な事を言って稼げる商売。
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・もし逃亡者が見ていれば何らかの心理的脅威を与える事は事実である。
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遺伝子に潜むリスクファクター

p85-86
この時「クロコダイルの涙」という言葉の意味が「うそつきの涙」だと、ラジオで聞いて知った。
中略
これを聞いた時、僕は自分の正体がわかったような気がした。
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(考察)
・ここの全文で彼の遺伝子には過ちを犯しかねない危険なリスクファクターが潜んでいた事を確認できる。
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・事件前にリスクファクターを彼が気づいてれば自分自身で制御できたかもしれない。
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逃亡容疑者からの分析

p164
1日、ディズニーランドで過した。TDLってこんなものだったか。楽しくはなかった。
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(考察)
・私はディズニーランドに行った事はない。
行っても楽しめないと初めから思っていたのでこれで、行く機会は無いだろう。彼が証明してくれた。
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p201-202
僕が長い間働いた飯場は、
中略
「キレる若者」と新聞やテレビで言われて久しいけれど、実際はこういうことなんだろうか。
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(考察)
・これは、その境遇の中に居ないと理解出来ない事実である。
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・この要因(「キレる若者」過程)は遺伝的にも刻まれた事項でもある。
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逃亡者の罪と罰

p4 . 10-15
その間、いくつかの建設現場で合わせて二年以上働き続けた。アスベストや粉塵が舞う中で解体作業。
汚物にまみれながらの労働。仕事が危険であればあるほど、きつければきついひど、汚ければ汚いほど、
自分が彼女にしたことへの報いなんだ、償いのひとつなんだと思って働いた。
後略
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p156 . 5-9
前略
誰か人のためになっている。そう思うとうれしかった。
そしてこれは、罪の償いに少しでもならないか、と考えて働いた。
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p204 . 4-10
前略
「責める相手は自分しかいない」
我慢しなくちゃいけない、自分が起こしたことなんだから。
後略
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(考察)
・仏様は労働に美徳を与えた。
キリスト様は罰に労働を与えた。
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・逃亡資金稼ぎの一面もあるが彼の罪の意識が過酷(ブラック)な労働に耐える事が出来たと思う。
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・そう「罪と罰」である。
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親愛なる市橋達也容疑者

p204
The things I owned ended up to owing me. (持っていたものが自分を束縛していた)
I found freedom. Losing all hope was freedom. (絶望の果てに自由がある)
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p152 . 8-11
僕はけんかにならないように、周囲にあいさつするようになった。現場ではよく笑うようにした。
うそ笑いだった。そうすると仕事がうまくいった。
後略
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p174 . 4
最初は外で眠る事に抵抗があったけど、自分は犯罪者だからと思うと肝が据わった。
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(考察)
・逃亡の始まりから四国に向かうと決める期間までの間は
彼は、ただ逮捕されたくないだけの人間であった。
その期間、ただ逃げるのに必死で眠る時間も惜しんで逃げている。
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・四国に向かうと決めた後、懺悔の気持ちを持った時から彼は落ち着き、
眠る事ができ逃亡と言う過酷な罰を背負う事になる。
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・そして逃亡者と言うプライドが彼を強くした。
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・逃亡中彼は同じ境遇の逃亡犯のニュースで癒され・恐怖を感じ・分析
同じ境遇の小説を多々読み未来を思ってたに違いない。
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(感想)
罪を犯した市橋達也容疑者は許されるものではない。
しかし、私は彼の逃亡生活が羨ましい。
罪を犯した事は許されないが、
それにより、全てを捨てて逃亡ではあるがワイルドな旅に出た。
彼が羨ましい。
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私に無いのは「持っていたものが自分を束縛していた」
「絶望の果てに自由がある」この言葉・実行である。
まだ、私には捨てられないものがたくさんある。
追い込まれなければ私には出来ないのかもしれない。
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リンゼイ・アン・ホーカーさんのご冥福をお祈りします。
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